設計者のための備忘録:住宅用サッシの開口寸法ガイド

時代の変遷と共に、私たちの生活や仕事の中でメートル法が主流となり、伝統的な尺貫法に慣れていない人が増えてきました。加えて、サッシの開口記号も一部の設計者にとっては、直感的に理解しにくいものかもしれません。私自身も尺貫法は苦手で、ミリメートルでの計算を好む一人ですし、開口記号を見てもすぐに寸法をイメージすることが難しいと感じることがあります。そこで、尺貫法に不慣れな方々や、サッシの開口記号に戸惑う方々のためにも、この備忘録を作成しました。

このブログは、設計者が住宅用サッシの開口寸法を素早く、そして正確に確認できるようにするためのものです。在来工法や2×4工法における主要な開口寸法を、メートル法で分かりやすくまとめ、開口記号の解説も加えています。サッシの選定から施工まで、このガイドが設計の助けになればと思います。住宅設計におけるサッシの選び方から、開口部の計画に至るまで、メートル法を基準にした寸法と、開口記号の読み解き方での解説を進めていきます。設計時の疑問を解消し、サッシ開口寸法と開口記号の理解を深めましょう。

住宅サッシの標準規格寸法

アルミ樹脂複合サッシ用、アルミ複層サッシ用

装飾窓(真壁工法以外)

勝手口ドア(真壁工法以外)

現代の住宅設計と施工において、統一された基準に沿って作業を進めることは、効率化と品質向上の両方において極めて重要です。特に、住宅の窓やドアといったサッシの取り扱いにおいて、一貫した基準が設けられていることは、計画段階から施工、完成後の利用に至るまで、多大な利益をもたらします。このような背景のもと、日本サッシ協会により住宅サッシの標準規格寸法が定められています。

https://www.jsma.or.jp/Portals/0/images/useful/houreikijun/kikakusunpo(20210426).pdf

▲日本サッシ協会

導入の背景

住宅用サッシの規格化は、ユーザーのニーズを反映したものです。耐風圧性、気密性、水密性、断熱性、遮音性といった性能の向上はもちろんのこと、部品化・ユニット化が進む中で、寸法体系をメートル法に基づくものへと移行させることが求められています。これは、設計・施工の標準化と合理化を図るため、また、国際的な基準に合わせるための重要なステップです。

標準規格寸法の適用範囲

この標準規格寸法は、新築の住宅に使用されるサッシや出入り口用商品(玄関ドア、勝手口ドアなど)を対象としています。これにより、住宅建設におけるあらゆる段階で、一貫性と予測可能性が保証されます。また、これらのサッシやドアに付属する製品(網戸、面格子、窓手すりなど)も、同様の規格寸法が適用され、一体的なデザインと機能を実現します。

寸法の表示方法

サッシの寸法は、その機能性とデザイン性を最大限に引き出すため、非常に細かい部分にまで注意が払われます。標準規格寸法では、幅と高さの両方で「内法基準寸法」を使用し、これに基づいてサッシのサイズが定義されます。呼称記号については、「幅3桁+高さ2桁=5桁」の形式で表示され、このシステムにより、設計者や施工者は必要なサッシを正確かつ迅速に特定することができます。

サッシ開口寸法とは

サッシの開口寸法とは、サッシが設置されるべき壁の開口部のサイズを指します。この寸法は、サッシ自体の寸法とは異なり、サッシの枠を含む全体のサイズを示します。開口寸法を正確に把握することで、サッシが適切に収まり、機能を発揮することが可能になります。

サッシの外寸法の把握

サッシの外寸法は、サッシ枠全体の外側から外側までのサイズを指します。これには、枠の厚みも含まれます。

クリアランスの加算

サッシを設置する際には、サッシと開口部との間に適切な隙間(クリアランス)を設ける必要があります。これにより、施工時の微調整が可能となり、サッシの開閉がスムーズに行われます。一般的に、クリアランスはサッシの上下左右に5mmずつ設けます。

開口寸法の算出

開口寸法は、サッシの外寸法にクリアランスを加えたサイズとなります。例えば、サッシの外寸法が幅1200mm、高さ900mmであれば、開口寸法は幅1210mm、高さ910mmとなります。

在来工法および2×4工法におけるサッシの高さ寸法設定

在来工法と2×4工法は、日本の住宅建築において広く利用される二つの主要な建築方法です。これらの方法においてサッシを選定し、設置する際には、適切な高さ寸法の選択が重要となります。ここでは、大壁納まり(半外付サッシ)と真壁納まり(外付サッシ)における高さ寸法設定に焦点を当てます。

玄関ドアの開口記号

実務で携わる観点:サッシの寸法設定

在来工法と2×4工法では、サッシの寸法設定がそれぞれの建築方法の特性を反映しています。しかし、現代の建築現場においては、真壁納まりを除くほとんどの場合で大壁納まりが一般的に採用されています。その結果、在来工法でも2×4工法でも、サッシの高さ寸法の基本的な考え方に大きな差異は見られません。実際にサッシを選定する際には、開口の幅がより重要な要素となってきます。

特に2×4工法においては、一般的に利用されるサイズを把握しておくことが、設計や施工の効率化に繋がります。例えば、以下の二つのサイズは2×4工法で頻繁に用いられる基本寸法として覚えておくと便利です:

  • 幅1820mmから両端の柱の幅(83mm×2)を引いた寸法は、約1654mmです。(開口記号では069になります)
  • 幅910mmから両端の柱の幅(83mm×2)を引いた寸法は、約744mmです。(開口記号では160になります)

これらの寸法は、2×4工法で設計される住宅において、サッシを選定する際の便利な基準となります。効率的な設計と施工を進めるために、これらの基本的なサイズを念頭に置くことが推奨されます。

 

 

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